みかん

今日の朝の礼拝で大野チャプレンのお話を紹介します。
 芥川龍之介の「みかん」と言う短編の紹介でした。芥川は当時横須賀の海軍学校で英語を教えていました。授業のあと東京にもどるため、横須賀駅から横須賀線の二等車に乗り込みます。発車前に14歳くらいの娘が乗り込んできて、自分の向かいに座ります。いかにも田舎娘といった容貌で、ヒビだらけの赤く火照った頬の娘は三等車の切符を握りしめています。
 横須賀駅を出るとトンネルに入ったあたりで、娘は列車の窓を開けます。途端に機関車の黒煙が車内に流れ込み、芥川を不快にさせます。列車がトンネルを抜け踏み切りに差し掛かると、踏切の柵の向こうでは頬の赤い3人の男の子が、一斉に手を上げて歓声を張り上げていました。娘は開けた窓から身を乗り出し、男の子たちに向かって色鮮やかな蜜柑を投げました。娘が東京の奉公先に赴くのを、弟たちが見送りに来ていたのだと芥川は理解します。
 衣笠病院から横浜に帰る横須賀線の中で、横須賀駅を出ると短いトンネルがあって、そこを抜けたところにいまでも踏切がありました。芥川の短編の舞台を見ることができました。

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1宮田 節也

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